陰にて光咲く
成瀬はアズマの襟元を掴んで、頬を殴っている。
まずい…このままじゃアズマが…
頼むから…もうやめてくれ‼︎
俺は足元にあった大きめの石を手にした。
それを両手で持って、成瀬の背後に立つ。
石を持つ手に力を入れた。
「やめろって言ってんだろ‼︎」
そして、成瀬の頭上で石を振りかざした。
鈍い音と同時に、成瀬が前へ倒れこむ。
俺の目にはその光景が、スローモーションのようにうつっていた。
成瀬はアズマの足元に崩れ、ピクリともうごかない。
石を持ったまま、その場に呆然と立ち尽くす。
アズマも足元に転がっている成瀬を見つめたまま、固まっている。
なぜ、こんなことをしたのかわからない。
ただ、成瀬の暴走を止めたかった。
それだけなのに。
俺…
今、俺…何した?
石を持っていた右手にぬるっとした感触が伝わった。
指に付いたのは…
血。
成瀬の血…
「ああ…あ…」
声にならない声が喉から出てきて、全身から力が抜けていき、石を下に落とした。
俺はいったい何してんだ…
俺が、俺が成瀬を…
「ああああああああっ‼︎」
頭が真っ白になり、頭を抱えて叫んでしまった。