陰にて光咲く
一瞬胸をなでおろし、廊下に出た。
階段の方へと近づき、階段の上から一階に耳をすませた。
何も聞こえてこない。
一階には人の気配はなかった。
気のせいか…
そう思い、部屋に戻るために振り返ろうとした時だった。
背後に荒い息づかい。
首筋に当たる冷たいナイフの感触…
「お友達は見つかった?」
それはまさしく、さおりの声だった。
隣にあるどちらかの部屋に隠れていたのか…
動いて振り向いたりすれば刺されるかもしれない。
「さおり…お前…」
「とりあえず、さっきの部屋に戻ろっか。さあ行こう」
俺はさおりに身をゆだねる形となった。
アズマのいる部屋へと誘導される。
下手に逆らうと殺されるかもしれない。
緊迫した状況で部屋の中へ入ると、アズマがさおりの姿を見て驚愕した。
「お前、どうして…?」
アズマの表情が怯えてるようにも見える。
だって後ろにいるさおりは、アズマをここでずっと監禁していたのだから…