陰にて光咲く
さおりと映画を観終わってから食事するために、近くの居酒屋に入った。
この居酒屋は女の子が喜びそうなオシャレな居酒屋で、告白するならこの場がチャンスだった。
けれども、やっぱり向かいに座っているさおりのことをまともに見ることができない。
「映画おもしろかったね。ラスト感動しちゃった!拓夢はどこがよかった?」
「えっと…俺もラストかな」
心がもううわの空で、適当に返してしまった。
すると、
「お待たせしました、生ビールとカシスオレンジです」
店員がグラスをテーブルに置いた。
俺は気を取り直してビールの入ったグラスを持った。
「とりあえず飲もっか」
「そうだね」
「じゃあ、乾杯!」
カチンとグラス同士をくっつけて、ビールを一口飲んだ。
一口飲んだことで少し落ち着き、今なら告白できる気がした。
「あのさ、さおり…」
さおりはグラスを置いて俺を見た。