陰にて光咲く



ドアを開ける前に、ネクタイが緩んでいないことを確認した。


そして、ドアを2回ノックした。


「失礼します」


「どうぞ」


中から男性の返事が聞こえて、ドアを開けた。


スーツ姿の面接官は3人。


30代ぐらいの男性が両端に座っていて、真ん中に年配の男性が座っていた。


「星野拓夢と申します。本日はよろしくお願いいたします」


「どうぞ、そこにおかけ下さい」


テーブルを挟んだところにあるパイプいすを示され、そこに腰をおろした。


緊張で太ももの上においた手が震えてしまう。


そして、右端にいた面接官が咳払いをして言い始めた。


「それではまず確認しておきたいのですが、4年前にあなたが人を殴って逮捕されたという経歴がありますが、これは事実として間違いないですね?」


この場の空気が一瞬張り詰めた。


これまで何度か面接の経験があったが、たまに聞かれるこの質問。


だが、そこは誰が何と思うとも否定はできない。


「はい、その通りです」


まっすぐ前を向いて、力強くうなづいた。


面接官たちは最初から事実がわかっていたようで、特に表情は変えていない。


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