陰にて光咲く



自然とこみ上げてきた笑みを浮かべながら言った。


『あいつ出てきても帰る場所ないと思ったから、一応な』


いつの間にか、窓からは沈みかけの夕日が差し込んできていた。


アズマの話をすると、決まってしんみりしてしまう。


どちらかともなく、黙り込んでしまうのだ。


健太はそれをかき消すかのように、明るく言った。


『まあ、今度ゆっくりメシでも食いに行こうぜ。アズマもいれてよ』


『そうだな!健太も仕事頑張れよ』


『拓夢もな!』



そんなやり取りをして、電話を切った。


そして、自然と深いため息が出る。


窓の外に目をやると、夕暮れ時で空が青とオレンジの半々に分かれていた。


絵の具で塗ったようなそのグラデーションが、とても美しかった。





< 207 / 211 >

この作品をシェア

pagetop