陰にて光咲く



ソファから立ち上がり、キッチンへ向かう。


コーヒーでも淹れようと粉が入っているビンの蓋を開けた。



だが、粉はもうすっからかんだった。


そうだ、昨日で全部使い切ったんだっけ。


コーヒーの粉を買いに行くため、仕方なくマンションを出た。


一番近くのコンビニまで、歩いて10分のところにある。


日はすっかり沈み、夜を迎えようと空には一番星が輝いていた。


一番星は青とオレンジのグラデーションの上に、ぽつりとあった。


「一番星か…」


ふいに出てきた独り言で、頭の中にアズマの言葉が蘇ってきた。


ー「どの星よりも一番輝いているから。だから一番に見つけられるんだって」ー



あの時、アズマが何であんな話をしたのかわからなかった。


けど、今なら何となくわかる気がする。


ずっと暗い場所で誰にも知られず、もがいて苦しんでいた。


手を伸ばしても、気づいてもらえる奴なんかいなくて…


狭い箱の中に閉じ込められたように、孤独の世界で生きてきた。


きっとアズマは…


あの星のように、誰かに見つけてほしかったんだ。



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