陰にて光咲く



本当にいいのかよ。


あいつにあんだけ払わせといたら、さすがにマズイよな。


あとで俺の分はちゃんと払おう。


冷えた両手を上着のポケットに入れて寒さに耐えながら、アズマを待っていた。


その時、店のドアが勢いよく開いて、飛び出してきたのはアズマだった。


アズマは血相を変えた表情で俺を見つけると、


「逃げるぞ‼︎」


と言って、俺の腕を掴んで走り出した。


何が何だかわからず走らされるがままでいると、後方から


「待てコラァッ‼︎」


ものすごい怒鳴り声がしたので振り向くと、男の店員が追いかけてきているようだった。


まさか…まさか、こいつ…


「おいっ金払ったのか⁉︎」


前を走るアズマに叫びながら聞くと、


「払うわけねーだろっ焼肉ごときで‼︎」


と、叫びながら返してきた。


喰い逃げかよ‼︎


これって犯罪だよな?


俺たち、今マズイことしてるんだよな⁉︎


金払わなきゃマズイと頭の中では思っているのだが、足は止まりことなく走り続ける。


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