陰にて光咲く



このアパートで一人暮らしをしている。


「へえ、お前一人暮らしだったのか」


「ああ・・実家はそんな遠くないんだけどな」


実家は同じ市内にあるわけで大学にも通える距離だから一人暮らしの必要はなかったのだが、一度は実践してみたくて家を出たのだ。


「それより、そのバイクどうするんだよ?」


バイクを指さしながら聞いた。


「ああ、あとは俺がどうにかするよ。じゃあ、俺行くな」


「おっおう、じゃあな」


アズマはエンジン音を鳴らして、Uターンしてもときた道を走らせていった。


アズマの背中を見送った後、二階の自室に向かった。


部屋に入り電気を付けると、今朝と同じ光景の部屋が照らされた。


今日は朝から授業があったせいで朝食の片づけや洗濯しないまま出てきてしまい、だいぶ散らかっていた。


忙しさを理由に、ついついサボってしまいがちだ。


こういう時に親のありがたさを感じる。


身体が疲れきっていたがせめて洗い物だけでもして寝ようと、テーブルの上にあったマグカップとお皿を流し台へ運んだ。


流し台の桶に洗う食器を入れて水を溜めていると、台所に立てかけてある小さいカレンダーが視界に入った。




< 41 / 211 >

この作品をシェア

pagetop