陰にて光咲く
「おい、ちょっと待てよ!」
呼び止められてしまった…
これ以上こいつと話したくないが、ここで足を止めない勇気はなかった。
「なんだよ…?」
「君の名前、何てゆーの?」
「…星野拓夢」
こいつと関わりたくないが、名前くらい教えても問題ないと思った。
「拓夢か。俺は竹内アズマ、よろしくな」
アズマは笑顔で言ったあと、カバンを拾い上げて肩にさげた。
「じゃあな、拓夢」
アズマは背を向けて一度も振り返らず、暗い道を歩いて行った。
俺は足が地面にはりついたように、しばらくその場に立ちつくしていた。
やがて、アズマの後ろ姿は暗闇に消えていった。
踏切では、次の電車の接近を知らせる警音器が鳴り響いていたー