陰にて光咲く



俺はため息を吐いた後立ち上がり、アズマのところへ行った。


さおりを気にしてひそひそと話す。


「あのさ、こないだ言ったろ!今日はさおりが泊りに来るって。だから今日は何が何でも無理だ」


「さおり…ああ、あの子ね。でも頼むよ‼︎2人の邪魔は絶対しねーから」


「だから無理だって…」


そんなやり取りをしていると、さおりがカバンを持って立ち上がった。


「さおり?」


「私帰るね!アズマ君、今家帰れなくて大変なんでしょ?拓夢ん家泊まりなよ」


さおりはそう言ってコートを羽織り、玄関に向かってきた。


「いや、ちょっと待てよさおり…」


「私は大丈夫。拓夢と付き合えたことだけで嬉しかったから。じゃあまた連絡するね」


さおりは帰ってしまった。


最悪だ…


今日はさおりとめでたく付き合えた初日で、2人きりでゆっくり過ごすはずだったのに。


さおりじゃなくて、なんでアズマと過ごさなきゃいけねーんだよ。


「なんかごめんな、いい時に割り込んで」


ホントだよ…と心の中でつぶやく。


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