ロッカーに拾われた私
頭が…痛い…
それに日差しが眩しい…
私の部屋ってこんなに日当たり良かったっけ…?
……?
何かおかしい…
におい?布団の感触?
うっすら開けた視界に飛び込んできたのは見慣れないカーテンから覗くお日さま。
この高さだと昼近く…?
じゃない…
今考えるのはそこじゃなくて…
突然の覚醒。
………!どこ、ここ!?
体勢を1ミリも動かさず薄目のまま少しでも状況を把握しようと努力してみる。
とりあえず服は着てる…イヤ、ないないそれは。
ここから見えるのは見慣れない窓と見慣れない布団だけ…
徐々に動悸が早くなる。
ヤバイ…私なにしたっけ?
昨日は準夜勤で……ダメだ~思考がまとまらない…!
静寂に包まれた室内。私は音をたてないようゆっくりとそのままの体勢で後ろを見た……ら、そこには一人の男性がこっちを向いて座っていた。
!!
心臓が止まるかと思った。けど、今は止めてる場合ではない!
飛び起きてその場に座ろうとしたけど、体に力が入らなくて半分崩れたような姿勢になってしまう。それにしても頭がズキズキする。
「おはようございます…。」
我ながら情けない声。
「おはよう。」
その人は無表情でそう答えた。
何だか見覚えがあるけど、どこであったっけ?
「あの、ちょっと記憶がはっきりしないんですけど、昨日、何か、ありました?」
恐る恐るそう聞いた私のことを、彼は心底呆れたという顔でまじまじ見つめてきた。
うぅ、視線が痛い…。
雰囲気的に色っぽい感じは微塵もなく、私が一方的に迷惑をかけていると思われるこのシチュエーション。
そう思わせる要因は、もちろん彼の態度もあるけど、彼が、その、いわゆるイケメンなのだ。それもかなりの。
端正な顔立ちに少し幼さが残ったような瞳、明るい髪がそれを上手くまとめてて…この人は自分を魅せる方法を知ってる人だ…
って!そんなこと今はどうでもいい!
このイケメンと何があったんだ~!?
私の混乱を悟ったのか彼は呆れたように口を開いた。
「昨日、いや、もう今日か。公園で絡まれた挙げ句、ゲロをかけられた上にそのまま寝ちゃったから、さすがにほかってはおけず、ここに連れてきた、でオッケー?」
挙げ句、上に、さすがに、の部分にアクセントをつけて話す。それがどこか音楽的で、この人イケメンな上に才能豊かな人だな~なんて思って聞いてたけど、内容が遅れて頭に入ってきて、体温がスーっと下がるのを感じた。
「す、すみません!」
思い出した。準夜の後一人でお酒を飲んで彼に暴言吐いて…その…吐いた…最悪だ…。
「あの、服とか弁償します…。」
声が震えそうになる。指先が冷たい。
こんなのって、ちょっとした傷害事件じゃない。私ってお酒を飲んじゃいけない人間だったのね~!あぁ、後悔先たたず…!
「これってちょっとした障害事件だよね。」
!!エスパー?!
「あの、出来れば穏便に…。」
「そうだね、じゃあこっちの条件飲んでくれる?」少しだけ表情が緩む。
「え?なんですが?」聞き返す声が上ずる。
「ここでさ、暮らしてほしいんだよね、俺と一緒に。」
は?
長い沈黙を破ったのは爆弾を私に投げつけた彼の方だった。
「口、空いてるよ。」
思わず手で口を塞ぐ。
「いや、あの、そうじゃなくて…。」
「ああ、やっぱびっくりするよね。」
「はい…。あの…聞き違いとかじゃなければ…。」
「うん、一緒に暮らしてって言ったんだ。」
「………家政婦とか、ですか?」
「それもいいけどちょっと違う。」
「じゃあ何ですが!?」
一向に見えない話に思わず声が大きくなる。何を言いたいの!?
「まぁ、落ちついて、ね。」
その可笑しそうな笑みに一瞬思考が止まる。あまりの状況に忘れかけてたけど、この人本当にかっこいい…何だろうこの少年が持つような独特な艶っぽさは。あぁいい男に弱い自分が憎い。
「あのね、俺、音楽やってるの。まだ駆け出しに近い感じだけどね。」
「はぁ。」会話が思わぬ方向に転がり何とも気の抜けた返事。
「でね、最近ちょっとチャンスに恵まれてね、新しい曲が作りたいんだよね、女心の。」
イケメンの彼はそのにわかには信じがたい話を続ける。
「でもさ、ちょっと女心ってあんまり考えたことなくって煮詰まってたんだ。そこにあんたが現れたってわけ。」
「…で…。」やっぱり話が見えない。
「あんたさ、考えてること顔に出るし、ってか口にも出るしね。」
昨夜のことを思い出したように笑いをこらえてるような表情になる。
「で、結論ね。しばらく俺と一緒にいて、思いや考えを全部口に出してよ。」
………?!
「は?」
説明を聞いて更に混乱するという不思議な事態に言葉が出ない。
「いや、ちょっと常識外だとは思うけどさ、昨日のあんたの行動もかなりのもんだと思うよ。」
「…それは…」
「あれからも大変だったんだぜ、連れてくる間も殴る蹴るで。」
さーっと血の気が引く。私、もうお酒は止めようと心に誓う。
「仕事の事とか、彼と別れた事とかずっと愚痴ってたしさ。」
そんなことまで…!
「相当のストレス抱えてるみたいだけど、障害事件起こしちゃまずいよな。」
障害事件認定!!?
「そういうのって、溜め込まずに言葉にしたほうがいいって。俺も助かるし、ね。」
ね、って…。
「当たり前だけど、それ以上のことは望まないし。」
興味もないし。と聞こえた気がした。
後から思えば夜に引き続き自分らしくない選択だったと思う。
けど、何かを捨てたくて、何かを見つけたくて、私はそれを掴んだのだと思う。
「分かりました。」
「やった、ありがとね。」
そう微笑む彼はヒロと名乗った。
こうやって私と彼との奇妙な同居生活は始まったのだ。
それに日差しが眩しい…
私の部屋ってこんなに日当たり良かったっけ…?
……?
何かおかしい…
におい?布団の感触?
うっすら開けた視界に飛び込んできたのは見慣れないカーテンから覗くお日さま。
この高さだと昼近く…?
じゃない…
今考えるのはそこじゃなくて…
突然の覚醒。
………!どこ、ここ!?
体勢を1ミリも動かさず薄目のまま少しでも状況を把握しようと努力してみる。
とりあえず服は着てる…イヤ、ないないそれは。
ここから見えるのは見慣れない窓と見慣れない布団だけ…
徐々に動悸が早くなる。
ヤバイ…私なにしたっけ?
昨日は準夜勤で……ダメだ~思考がまとまらない…!
静寂に包まれた室内。私は音をたてないようゆっくりとそのままの体勢で後ろを見た……ら、そこには一人の男性がこっちを向いて座っていた。
!!
心臓が止まるかと思った。けど、今は止めてる場合ではない!
飛び起きてその場に座ろうとしたけど、体に力が入らなくて半分崩れたような姿勢になってしまう。それにしても頭がズキズキする。
「おはようございます…。」
我ながら情けない声。
「おはよう。」
その人は無表情でそう答えた。
何だか見覚えがあるけど、どこであったっけ?
「あの、ちょっと記憶がはっきりしないんですけど、昨日、何か、ありました?」
恐る恐るそう聞いた私のことを、彼は心底呆れたという顔でまじまじ見つめてきた。
うぅ、視線が痛い…。
雰囲気的に色っぽい感じは微塵もなく、私が一方的に迷惑をかけていると思われるこのシチュエーション。
そう思わせる要因は、もちろん彼の態度もあるけど、彼が、その、いわゆるイケメンなのだ。それもかなりの。
端正な顔立ちに少し幼さが残ったような瞳、明るい髪がそれを上手くまとめてて…この人は自分を魅せる方法を知ってる人だ…
って!そんなこと今はどうでもいい!
このイケメンと何があったんだ~!?
私の混乱を悟ったのか彼は呆れたように口を開いた。
「昨日、いや、もう今日か。公園で絡まれた挙げ句、ゲロをかけられた上にそのまま寝ちゃったから、さすがにほかってはおけず、ここに連れてきた、でオッケー?」
挙げ句、上に、さすがに、の部分にアクセントをつけて話す。それがどこか音楽的で、この人イケメンな上に才能豊かな人だな~なんて思って聞いてたけど、内容が遅れて頭に入ってきて、体温がスーっと下がるのを感じた。
「す、すみません!」
思い出した。準夜の後一人でお酒を飲んで彼に暴言吐いて…その…吐いた…最悪だ…。
「あの、服とか弁償します…。」
声が震えそうになる。指先が冷たい。
こんなのって、ちょっとした傷害事件じゃない。私ってお酒を飲んじゃいけない人間だったのね~!あぁ、後悔先たたず…!
「これってちょっとした障害事件だよね。」
!!エスパー?!
「あの、出来れば穏便に…。」
「そうだね、じゃあこっちの条件飲んでくれる?」少しだけ表情が緩む。
「え?なんですが?」聞き返す声が上ずる。
「ここでさ、暮らしてほしいんだよね、俺と一緒に。」
は?
長い沈黙を破ったのは爆弾を私に投げつけた彼の方だった。
「口、空いてるよ。」
思わず手で口を塞ぐ。
「いや、あの、そうじゃなくて…。」
「ああ、やっぱびっくりするよね。」
「はい…。あの…聞き違いとかじゃなければ…。」
「うん、一緒に暮らしてって言ったんだ。」
「………家政婦とか、ですか?」
「それもいいけどちょっと違う。」
「じゃあ何ですが!?」
一向に見えない話に思わず声が大きくなる。何を言いたいの!?
「まぁ、落ちついて、ね。」
その可笑しそうな笑みに一瞬思考が止まる。あまりの状況に忘れかけてたけど、この人本当にかっこいい…何だろうこの少年が持つような独特な艶っぽさは。あぁいい男に弱い自分が憎い。
「あのね、俺、音楽やってるの。まだ駆け出しに近い感じだけどね。」
「はぁ。」会話が思わぬ方向に転がり何とも気の抜けた返事。
「でね、最近ちょっとチャンスに恵まれてね、新しい曲が作りたいんだよね、女心の。」
イケメンの彼はそのにわかには信じがたい話を続ける。
「でもさ、ちょっと女心ってあんまり考えたことなくって煮詰まってたんだ。そこにあんたが現れたってわけ。」
「…で…。」やっぱり話が見えない。
「あんたさ、考えてること顔に出るし、ってか口にも出るしね。」
昨夜のことを思い出したように笑いをこらえてるような表情になる。
「で、結論ね。しばらく俺と一緒にいて、思いや考えを全部口に出してよ。」
………?!
「は?」
説明を聞いて更に混乱するという不思議な事態に言葉が出ない。
「いや、ちょっと常識外だとは思うけどさ、昨日のあんたの行動もかなりのもんだと思うよ。」
「…それは…」
「あれからも大変だったんだぜ、連れてくる間も殴る蹴るで。」
さーっと血の気が引く。私、もうお酒は止めようと心に誓う。
「仕事の事とか、彼と別れた事とかずっと愚痴ってたしさ。」
そんなことまで…!
「相当のストレス抱えてるみたいだけど、障害事件起こしちゃまずいよな。」
障害事件認定!!?
「そういうのって、溜め込まずに言葉にしたほうがいいって。俺も助かるし、ね。」
ね、って…。
「当たり前だけど、それ以上のことは望まないし。」
興味もないし。と聞こえた気がした。
後から思えば夜に引き続き自分らしくない選択だったと思う。
けど、何かを捨てたくて、何かを見つけたくて、私はそれを掴んだのだと思う。
「分かりました。」
「やった、ありがとね。」
そう微笑む彼はヒロと名乗った。
こうやって私と彼との奇妙な同居生活は始まったのだ。