notitle



今でさえ何も聞いてこない渚だけど、最初の頃は、これでもかってほどしつこかった。

体育の授業にだけ出席を拒む私に違和感を覚えたのだろう。

まぁ、気持ちはわかるけど…それでも、何も聞かないのが常識ではないのだろうかとも思っていた

他よりも人一倍気の強い渚は、“空気を読む”という事を知らないのかと、常識が無いのかと、疑うほどだった。

HRが始まらず少しイライラし始めた私は朝読んでいた小説を片手に教室から出た。

またかと言わんばかりの顔を渚がしている事は知っている。

渚とは高校で知り合った。

一年の始め、県外から引っ越してきた私は右も左も分からなかった。

そんな私に初めて声をかけてくれたのが渚だった。

そこからは毎日向こうから関わってくるようになった。

一年近く経った今では私自身もすこしは頼りにしてる存在だ。

そんな過去を思い出しているうちに目的地に着く。

図書室の文字が上にある扉を躊躇なく開けた。

この図書室は建設当初からある図書室で今は皆二年前に作られた第二図書室を利用している。

窓際の一番奥、入り口から一番遠く目立たないこの場所。

ここは小説の棚が一番近く日当たりも一番いい場所で、今では私の特等席になっている。

この図書室はもう一つの図書室とは違う少し古い本の匂いが漂う落ち着く所でもある。
< 6 / 8 >

この作品をシェア

pagetop