夜の甘やかな野望
「少しでも、自分の好きなように生きられるように」
「兄貴を反面教師にしているんで」
最大の皮肉を返すと、笑われた。
「面白くない弟」
「どーも」
宗忠は平坦に返すと、二人は静かにグラスを傾けていた。
「あの女、おまえ?」
「は?」
宗忠が宗雅に視線を向けると、宗雅は窓ガラスを見ていた。
「どれ?」
いくつかの女性の視線が向いているのが写っている。
「いなくなった」
「ふうん」
宗雅は何か言いたげだが、何も言わずに手にしているグラスを空にする。
「じゃあ、行く。
またな」
「ああ、碧ちゃんによろしく」
それに対しては無返答で行ってしまった。
あからさまで、わかりやすい態度に宗忠は少し笑うと、自分もグラスを空にして立ち上がった。