夜の甘やかな野望


駅までの道のりを重い足を引きずる。


一歩ごとに花束を入れた紙袋がガサガサと音をたてた。


お見舞いで女らしさとか言ってるけど、自分の家にこれを飾る花瓶さえないじゃん。


なにがギャップなんだか。


倫子は皮肉っぽく笑いながら、手にした紙袋を眺めながら歩いていた。


グレーピンクのラナンキュラスが入った花束。


品種改良されたらしく、珍しい花の形と色だった。


中心が八重で、周囲が一重の大輪なのだ。


温室栽培の輸入物らしい。


宗忠に似合いそうで、即決した。


倫子は軽く一息吐く。


そしてホームのゴミ箱に紙袋を落とすと、閉まりかけていた電車に飛び乗った。
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