夜の甘やかな野望


だから、昼休憩になると、弁当を買いに行こうとしていた倫子をランチに誘った。


うさん臭そうな横目。


「おごりますよ」

「すっごい高い店に行ってみたいと思っていたんですけど」

「いいですよ」


宗忠はにっこりと笑って、あっさり言うと、倫子はなんだか罰の悪そうな顔をした。


意地悪心で言ってみたら、あっさりと頷いたからだろう。


ちょっと居心地悪そうな倫子に、宗忠の気分が晴れてくる。


普段、むすっとした機嫌悪そうな顔をしているだけに、こんな倫子を見ると“当たりくじ”を引いた気になる。


本人は、その不機嫌な顔が周囲を遠ざけているとは知らないだろう。


不機嫌な顔をしているつもりもないだろうから。
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