夜の甘やかな野望


「一人暮らしをしていると、ランチに贅沢できないんです。
実家から通っている同期なんて、給料は全部お小遣いだから、毎日、優雅なランチタイムなんですけど。
 ピケティの格差って、こういうことですかね」


なんとなく弁解めいた口調。


「そうなの?
それなら誘ってよかった」


倫子が真剣な顔で語るのがおかしいが、笑ったらへそを曲げるだろう。


「倫子さんは、ピケティの本、読んだの?」

「読みませんよ。
 格差について書いてあって、解決について書いてあるんじゃないんですよね?
 落ち込むだけじゃないですか」

「なるほど」


横断歩道の信号が赤になって立ち止ると、横目でにらまれて可笑しかったが、宗忠はまじめにうなずいておいた。
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