夜の甘やかな野望
視線を前に戻すと、反対側にある店のウィンドウをのぞいていた女性がこちらを見た。
しばし動きを止めてから、軽く会釈する。
倫子は、瞬きをした。
知り合い、だったかな?
なんとなく見たことがある気がするのだが、記憶がおぼろげだ。
すると、隣に立っている宗忠が軽く手を振りかえした。
それを受けた彼女は、横にいる彼の背中にそっと触れた。
倫子は振り返った男の顔を見て、息を止めた。
しなやかな眉にくっきりした二重の目。
鼻筋が通って、柔らかいカーブの口元。
一つ一つのパーツが整っているだけでなく、調和をしていた。
それによる迫力。
もしかして俳優?