夜の甘やかな野望
「ええと。
映画とか?」
言い繕っているのがバレバレだと自分でもわかるのだから、倫子もちらりとこちらを見ただけだった。
「気になっているレストランとか」
沈黙が重くなっていく。
あー、もう最悪。
宗雅は片手で顔を覆った。
「倫子さん、ごめんね。
本当はマンションに帰って、ゆっくり夜を過ごしたいと考えていたんだけど。
倫子さんとは久々だったので、ついつい」
「“とは”?」
「うーん・・・と。
いや、全部切る前のことだから」
あー、なんか語るごとに、墓穴を掘っている感じ。
お友達だったら、にっこり笑って誤魔化しちゃうんだけどなあ。
沈黙が重い。