夜の甘やかな野望
「えっと、そういう意味じゃなくって、医者としての自信というかキャリアというか、そういうのを固めようっていう意味で・・」
「あら、なおさら先に家庭の方を固めたほうがいいんじゃなくて?
莉奈さんなら院長夫人として、たーちゃんを支えてくれるわ」
「いや、ちょっとそれはまだ考えていないんだ。
ごめんね」
宗忠は愛想よく母親に笑った。
「そうなの。残念だわ。
でもね、たーちゃん。
もうそろそろ、莉奈さんにお話ししてもいいと思うの。
ね、あなた」
「うん、その通りだ。
あまり長く待たせるのは良くない」
宗忠は父、宗重を見ると、日本人離れしたくっきりとした目が笑っている。
くそ、この狸。
宗忠は胸の中で毒づく。
宗忠の日々の素行を知っていて、この会話を楽しんでいるに違いない。
どんだけ自分だって結婚前に遊んだんだよ。