夜の甘やかな野望


「わかってるって。
 もうちょっと待ってよ。
 ほら、ああいうことがあったから、二度と起きないようにしないと、と思って」


神妙な顔をしてみせると、母、静香は妙に納得した顔になった。


「それは最もだが、莉奈さんと付き合って長いんだ。
 それなりの覚悟をしないとな」


不気味な光を帯びている父親の瞳をしばらく見つめた。


なるほど。


断るのなら、それなりの覚悟をしろと。


「そうだね」


宗忠はにっこりと笑った。


ややして宗忠が帰り、静香がお茶の後片付けをしていると、夫が含み笑いをしているのに気が付いた。
< 152 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop