夜の甘やかな野望
「父親似なんだ。
僕は母親似。
もう一人の兄も母親似」
「お兄さん、二人いるんですか」
「うん、僕、末っ子」
「納得感あります」
「そう?」
宗忠はにこにこ笑っている。
「あの兄はああいう外見じゃない?
だから寄ってくるのも、蛾みたいに強烈な女性ばっかりなんだよね」
「蛾」
表現に絶句する。
「それを兄は平然と喰い散らかすんだ。
よく、かぶれない上、食あたりにもならないと感心していたんだよね。
フグと同じで、“毒があるから旨い”っていう体質かと思っていたんだけど。
意外や意外、一緒にいたのは奥さんなんだけど、シジミチョウみたいでしょ?
ああいうタイプと結婚するとは思わなかったなーと」
「内藤先生の譬え、変わってますね。
昆虫マニアですか?」