夜の甘やかな野望
“あの男と過ごした日々は特別。これが普通で、私にはぴったりだ”と言い聞かせて、更に1週間が経った。
残業を1時間ほどこなし、自宅に戻ると、風呂上りに大好きな苦いビールを空ける。
鳴ったインターホンの映像を見て、口の中の苦さが増した。
以前、修羅場にしないって言っていたから、このままうやむやにしてくれるかと思っていたのに。
部屋の灯りでいることを確認しているのだろうから、居留守を使うわけにいかず、倫子は嫌々出た。
「はい」
声が思いっきり不機嫌なのが自分でもわかる。
「こんばんは」
ちょっと苦笑した顔と声。
倫子はモニターを眺めながら、このままオートロックを開けずに会話するのもありだなと思った。