夜の甘やかな野望
「加絵さんって、先輩の奥さん。
先輩が胃がんになって、薬物治療をしていたんだけど、摘出手術をすることになって。
だから執刀する先生を紹介したんだ。
うちの病院じゃないんだけど、こっちの方に居る先生だから、待ち合わせて手術する病院に送って行った。
本当は駅で待ち合わせだったんだけど、宿直が長引いたから、病院の方に来てもらっていたんだ。
先輩があの病院を紹介してくれたから、色々と恩があって」
それに数少ない味方だし。
この言葉は飲み込んでおく。
「誤解?」
倫子が呆けたようにぽつりと呟く。
「誤解ですね。
ちゃんと聞いてよ。
うん、まあ、聞かないでバサッといく性格だってわかってるけど。
でも、あのぐらいでも倫子さんにはアウトってか」
「はい?」
最後が独り言のようなのに聞き取れない。