夜の甘やかな野望
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藪蛇って、絶対こういうことを言うんだ。
人生初の見合いの席で、宗忠(むねただ)は諦めの中にいた。
事の発端は、ロンドンに留学中の次兄が突然、「婚姻届を送れ」と言ってきたことだ。
内藤家三兄弟の中で、一番冷淡な遊び人で、結婚は政略結婚で無理やりさせるしかないだろうと思われていただけ
に、両親、特に母親の喜びは半端なかった。
それで勢いづいてしまったのだ。
ああ、藪蛇だ。
宗忠は、にこやかな笑顔を張り付けたまま、胸の中で繰り返した。
この笑顔を浮かべていれば、世の中が上手く回っていくことを、良く知っている。