夜の甘やかな野望


「倫子さんだけだから」


返事ができない。


なんだか完敗だ。


でも同時に、心の隅で悟っていた。


この男はこういう結果を読んで、会ってみるかと問うたんだ。


「その時は・・・」


くちびるが重なりかける位置で、宗忠は動きを止め、倫子の目をのぞき込む。


「本当のその時は、フェードアウトでお願いします」


合わさっていた宗忠の瞳の温度が下がった。


「えーと?」


固まっているのに、倫子は呼びかける。
< 200 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop