夜の甘やかな野望
なんでわざわざそんな大変なことを?
失礼にも思わず聞くと、やってみたくて、と気恥ずかしそうに答えた。
それで思い出した。
バッハのコンサートの夜、宗忠が語ったことを。
この人はこちらが思っているよりも、ずっと医者の使命を真摯に考えているのかもしれない。
だけど、あの内藤宗忠という男の真意はいつでも見えづらい。
倫子は憂鬱なため息をついた。
本心では別のことを考えていそう。
いつだって外面はいいが、たまに悪魔のしっぽが垣間見えて、本心がわかる時がある。
だから余計に、しっぱが見えないとき、本当は何を考えているんだろうって、不安。
本当は、どう思っているのかって。