夜の甘やかな野望


「ええと。
 ありがとう。
 でも、僕、山崎さんに給料を払う余裕は無いから」

「いいんです!
 内藤先生と一緒に暮らせれば」


宗忠も倫子も絶句した。


「あの・・・ね、山崎さん。
 僕が看護婦の派遣を断ったのは、手が足りないっていうのもあるんだけど。
 もう一つあるんだ」


宗忠は彼女の顔を真正面にとらえた。


「彼女に心配をかけたくないっていうのが大きいんだ。
 何も無いって言ったって、長時間、二人きりで行動するじゃない?
 今は彼女と遠距離だから、余計な心配をさせたくないから」


微笑は無く、真剣な表情だった。


本心なのか、面倒から遠ざかりたいからなのか。


倫子の所から距離が遠く、そこまで表情の襞はくみ取れない。
< 207 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop