夜の甘やかな野望
「おまえ。
踏みつけたいんだろ?
あの父親」
宗忠が兄を見ると、獲物を見つけたように瞳を輝かせ、薄く笑っていた。
こういう時、この兄をうっとおしいと思う。
知っているらしく、宗雅は空気を一瞬で一新させた。
「まあ、とりあえず、きっかけがあればいいんだよ。
あの父は。
手っ取り早く、子供でも生まれたら、見せに来るとか。
それで勘当も解消さ。
俺としては病院の経営も学校の経営も変わらないから、同時にやっても大したことないし」
手っ取り早く子供ってなんだよ、と思ったし、大したことあるだろう、と突っ込みたかったが、兄の思いやりとわかって宗忠は口をつぐんだ。