夜の甘やかな野望
「夕食を食べて帰ろうと思ったけど、久々に碧さんに作ってもらいたいかな」
隣は全くの無言だ。
珍しくは無いけれど。
宗雅は一瞬だけくちびるを引き結んだ。
そして口を開いた。
「帰ってきて。
碧さん」
重い沈黙がたちこめる。
「あの時以上の事は、何一つ約束できないけど」
考え込む空気。
「あの時?」
「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓います」
宗雅が静かに放った言葉に、碧が奥歯をかみしめている。
それは自分も誓った言葉だからだ。