夜の甘やかな野望
「そう」
どこか寂しそうな声音に倫子は宗忠を見上げた。
穏やかで柔らかな眼差し。
そしてどこか辛そうで切なそうな影。
でも瞬時にいつものように、にっこりと笑った。
「もう僕たちは引き上げるよ。
また、聞きに来るね」
「はい」
さゆりもにっこりと笑った。
この人たちはこういう笑い方で本心を隠すんだと、倫子は悟った。
再び手を引かれて席の戻ると、そのまま会計を済ませて外に出た。
「おいしかったですね」
沈黙が重くて無難なことを口にする。