夜の甘やかな野望
キッチンダイニングの横にある、この和室は殺風景だ。
見る暇がないからテレビはない。
ブルートゥースでつなげるスピーカーを置いている。
背丈ほどの高さのある円柱形で、部屋の隅に一本ずつ。
それと乱雑に積んである医学本と雑誌。
専門だけ深く知っておけばいいというわけではないので、医師免許を取った時以来の猛勉強の日々だ。
宗忠はポケットを探ってスマホを取り出すと、ミュージックを立ち上げた。
この家に住むようになってからは、バロックか古いJAZZをよく聞くようになった。
宗忠は適当に再生を押した。
女性にしては低い、物憂げな歌声が流れだす。
宗忠はしばらく目を閉じて歌詞に耳を傾けていた。