夜の甘やかな野望
「倫子さん」
「いるんだったら、電気をつけてください。
暗くなっているのに。
暗いのに音楽が流れているし。
不気味すぎ」
「すいません」
つっけんどんな口調ながら、倫子は明らかにほっとした顔をしていた。
つっかえながらの玄関引き戸を開けて、中に入ってくる。
「よくわかったね。
1回来ただけだから、わかりづらかったでしょ?
言ってくれれば、迎えに行ったのに」
「往診で出ているかと思ったので。
車のナビに住所を入れたら、とりあえず辿りつけそうだったし」
「車できたの?」