夜の甘やかな野望
倫子が横にいることと、緑茶を飲めたことに満足感を覚えながら、宗忠は歌詞に耳を傾けていた。
「のどかな風景」
隣に座った倫子が呟くのに、宗忠は軽く噴き出す。
「うん、まあ、そうとしか言えないよね」
縁側から先は、むきだしの土の庭。
その先には、かつては畑だったらしい草原が広がっている。
庭と草原の境にはリンゴの木が二本植わっていて、カラスが食べ残した、リンゴらしき物がぶら下がっている。
「あれは何の花?
すごく綺麗」
リンゴの木の下に、白い花が群生して咲き乱れていた。
風が吹くと、たおやかに揺れて、花びらがひらひらとこぼれる。