夜の甘やかな野望



そして気づかれないように、宗忠はそっと倫子の横顔を見た。


散っていく花びらを見つめる倫子のまなざしが、不安気に揺れている。


不安にさせているのは知っているし、理由もわかっている。


でもこの人はあせらない。


下手な小細工もしない。


こうやって恋人が、わが道を突っ走っていても。


その強さと寛容さは、宗忠にとって何よりもありがたかった。


まあ、誤解して、この間みたいな突然の断絶をしたりするけど。


今後も、気を付けよう・・・。


ああ、そう・・・。


僕はこのひとの手を離すつもりはないんだ。
< 251 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop