夜の甘やかな野望
「マザコンって、体のいい嘘ですね?」
「本当だよ」
「だとしても、です。
そんなことしていたら、本命に逃げられますよ」
「そうだねえー」
宗忠は、そんなものはいないので、いいかげんな相槌を打つと、倫子がなぜだか物凄く悔しそうな顔をしている。
「そうやって、懐の深さに甘えていると、ある日突然、捨てられますよ」
余分な力が入っている感じだ。
「肝に銘じておきます」
ちょっと肩をすくめて、すまなさそうに言うと、悔しさを堪えるような表情になった。
「なんで、他に手を出すんですかね。
本命がいれば、それでいいじゃないですか」
「うーん、なんでだろうねえ」
倫子の喧嘩腰に宗忠は笑って応じる。