夜の甘やかな野望
なんとなく周囲を気にしてみるが、宗忠の姿は見かけなかった。
帰ったのか、レストランで食事しているのか、それとも上の階の部屋に入ったのか。
王子なんだから、隣に立つのはああいう女性なのは当然だが、ショックはある。
真逆の外見である私には、永遠に春というものは来ないのだろうか。
廊下にあるソファーに座ろうかと思ったが、人気の無い所にいると、余計に落ち込みそうで、人の多いロビーへと向
かった。
休日のため、かなりの人がロビーを行き来し、ソファーで談笑している。
これほど多く人がいるのに互いに無関心なのがいいし、人の気配はほっとする。
隅の目立たないソファに腰を下ろすと、ため息をついて体の力を抜いた。
「み・ち・こ・さん」
やわらかい声に振り仰ぐと、あの琥珀色の瞳があった。
「うわあっ」
思いもしない登場に、身をのけぞらせたら、後ろの壁に頭をぶつける。
いい音が響いた。