夜の甘やかな野望
「診察してあげようか?」
「セクハラです」
「いや、それが仕事で来ているんだから」
苦笑している。
この人に“診察してあげる”と言われたら、多くの女子は喜んでブラのホックまで外してかかるだろう。
現に、この人が当番の日は受診者が多い。
多すぎる。
さらさらとした茶色の髪の毛と大きい二重の目。
通った高い鼻に、やわらかいカーブのくちびる。
これで足でも短ければ、愛嬌があるのに。
顔から視線を下げれば、足はもて余し気味に組まれている。
それか、バカだったりとか、性格が悪かったりとか。
しかし宗忠は有名私大の医学部卒業だ。
そして倫子が良く言えばサバサバした対応、実はほとんど無礼と言えるのに、優しくて穏やかに対応してくれる。
いわゆる王子様。