夜の甘やかな野望
床はフローリングだが、ベッドの周辺だけ毛足の長いカーペットが敷かれている。
埋もれるようにして、ピアスの片方があった。
うわー、怖い。
絶対、わざとだ。
倫子は見なかったことにして、ゴミ箱を元通りに置いた。
モンシロチョウたちは、はかない外見とは違うらしい。
妖精さんみたいな本命がいながら、どういう無節操ぶりだ。
私にまで手を出しやがって。
腹が立ってしょうがない。
自分に、だ。
ロビーであの時、うっかり気持ちを表してしまった。
経験値豊富な彼は容易に読み取ったのだろう。
据え膳は遠慮なく食べる派らしい。
刺されてしまえ!
ゴミ袋をキッチンのステンレス製のゴミ箱に押し込むと、倫子は重厚感のある玄関ドアを、弁償しないで済む程度に蹴っ飛ばして、退散した。