夜の甘やかな野望
その日は、なるべく記憶を掘り起こさないようにしながらも、体の違和感を感じる度に赤面して過ごした。
実際、あんなに気持ちのいい思いをしたのは初めてだ。
体が忘れたく無いらしい。
でも思い出さない。
葛藤を続け、月曜日になって出勤した倫子は、気まずい、すっごく気まずい・・・けど平静、平静と暗示をかけるよ
うに胸の中で呟いていた。
宗忠は出勤してくると、いつも通り事務室に軽く挨拶をして医務室に入っていった。
倫子もいつも通りに、面談予約順の健康診断票の束を持って部屋に向かう。
「おはようございます。
これ、今日の面談者の健康診断票です」
「ん。
ありがとう」
宗忠は鞄を引き出しの中にしまい、デスクに置かれた書類をちらりと見た。