心音
私。
その日は、どんよりとした曇りだった。

今にも雨が降りそうな空。

私も気分がどんよりしていた。

大学2年生。医学部医学科、心臓外科志望。

そんな肩書きを持った私は図書館に行くための道を歩いていた。

来週に迫る考査期間。

そのために私は好きでもない勉強をしなくてはいけない。

どんよりもする。

少し俯き気味に歩く癖があるせいか、前から人が来ていることに気付かず、ぶつかってしまった。

「す、すみませんっ」

頭を下げると、上から降ってくる優しい声。

「こちらこそ、ごめんね」

顔を上げると、声と同じように優しそうな顔をした男の人が立っていた。

もう一度頭を下げてから立ち去る。

いつもより少し顔を上げるよう意識して。
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