心音
今日も、私は図書館への道を歩いていた。

以前と違う所は、今日は快晴である所。

秋空といったところだろうか。

少しひんやりとした風が気持ちいい。

いつものように俯き気味に歩いていると、瞳に靴の先が映る。

何故避け無いんだろう?と思いながら顔を上げると、以前見た優しい顔の男の人が立っていた。

「こんにちは」

にこやかに挨拶される。

「え、と…こん、にちは」

少しぎこちなくなってしまったのは許してほしい。

知り合いでもない人に急に挨拶されたのだから、当然の反応だろう。

「…勉強ですか?」

私のやけに膨らんだ鞄を見ながら問う。

「はい、そうですけど…」

「そうですか。…頑張ってくださいね」

そう声を掛けて立ち去った男の人。

応援は、ありがたいんだけど…

「誰なのよ、あの人…」

知らない人によく声なんて掛けれるな…

結局図書館までの道のり中、頭の中はあの男の人のことで一杯だった。
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