1/100でも、じゅうぶん甘いね。




「おい、離せ」




ドン、と男の人が押されて、ふたりが驚いた顔をしてよろける。その隙に手が離れて、やっと腕が解放された。

私もふらりとよろけて、声の主の胸に倒れ込む。

見なくてもわかる、この大好きな声。




「おい、何すんだよ!」
「なめてんのか?」



本格的に怒り始めてしまった男2人に怯えていると、次は温かい手が優しく私の手首を包む。



「柑奈、走れる?」



走って助けに来てくれたらしい唯くんが、私の耳元で聞く。

こくこく、とうなずくと、私の手を優しく掴んで走り出す唯くん。唯くんに連れられるようにして、人混みをうまくすり抜けていく。



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