1/100でも、じゅうぶん甘いね。
* * *
「……マジで?」
屋上の、閉まったばかりのドアを見つめて。
りんご飴を片手に持ったまま、ひとりで呟く。
目をつぶった柑奈の顔が、脳裏に焼き付いている。
長い睫毛が、白い肌に影を落として。
ピンクに染まった頬とか。
りんご飴の色がうつった、赤い唇とか。
思わず触れそうになってしまって、慌てて顔を離した。
柑奈はきっとそんなつもりじゃないと思った。
それでも、すぐに真っ赤になった顔とか。
慌てて出て行った背中とか。
柑奈の考えていたことが少し分かってしまった気がして、その場にしゃがみ込む。
「……なんだそれ、可愛すぎるだろ」
ぽつりと呟いた俺の言葉は、学園祭の賑やかな生徒たちの声に溶けていった。