1/100でも、じゅうぶん甘いね。
「唯くん、なんで……」
「俺だって柑奈と離れたくないし、柑奈さえいればどこだっていいよ」
「っ……」
唯くんだって、ばかじゃないから。
そんなことできるわけないってわかってるのに。
それでも私のわがままに付き合ってくれるのが、唯くんの優しさだった。
「ほら、行こうぜ」
眉を下げて、寂しそうに。とびきり優しく笑った唯くんは、私の手をそっと握る。
私もそれを握り返して、ふたりで駅まで歩いた。
「どっちに乗りたい?」
駅のホーム。下りと上りの間で、少し迷ってから下り列車に飛び乗った。
制服のまま、バッグには教科書とペンケースとスマホ、それからちょっとのお小遣い。
それだけで行くあてもない電車に飛び乗ったのは、私も唯くんも初めてだ。