1/100でも、じゅうぶん甘いね。


「修学旅行を思い出すね」



暗くなってきた海。
2人きりの海。

夜、一緒にいるって特別感。

離れ離れになるって思わなかったら、きっと楽しかっただろう。



「そうだな」


「……もう、こんなふうに会えないのかな」



言葉の最後は、少し震えて。
うまく声にできなかった。

唯くんはなにも言わないけれど、手を握る力が少し強くなる。



秋の海の風が、私たちだけに吹く。





「──それでも俺は柑奈が好きだよ」




唯くんが、はっきりした声でそう言った。
波の音にも紛れないくらい、しっかりと。



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