1/100でも、じゅうぶん甘いね。
「……唯くん、帰ろうか」
夜になっても帰ってこない私を心配した両親からの着信を何度か見送ったあと、ぽつりと呟く。
唯くんはなにも言わずに私を見て、優しく微笑んだ。
「いいの?」
「……本当に逃げられるなんて、思ってないし」
「俺は本気でもいいけどね」
「え……?」
「柑奈とふたりだけの世界で生きていくのも楽しそうだし」
冗談なんだか本気なんだかわからない表情の唯くんは、そう言って私の手を強く握り直した。
「帰ろうか」
真っ暗な空と共に、黒く染まっていった海。
波の音だけが永遠に響いて、光のない暗闇に、星空だけが綺麗に輝いていた。