1/100でも、じゅうぶん甘いね。
「唯くんのばか……」
いつもいつも、聞き慣れてしまうくらい何度も、私が唯くんに言われてる言葉を、唯くんの机に向かって呟いた。
机の上にある唯くんのバッグを、ひと睨みしてから教室を出る。
下校時間で、賑やかな廊下を1人で歩く。
「カラオケ寄って帰ろうよ」「早く部活行こう!」なんてみんなの声に、少し寂しくなった。
いつもはすれ違う生徒の声なんて、唯くんに夢中で耳に入ってこないのに。
私が怒っている理由は、ちょうど10分前に遡る。
授業が終わったから、唯くんと一緒に帰ろうと思って彼の姿を探したけど、既に教室に唯くんの姿はなくて。
窓際の1番後ろなんていう特等席にある唯くんの机を見たら、バッグだけが置いてあった。
バッグがあるってことはまだ帰っていない。
唯くんを探すためにとりあえず廊下に出てみたら、階段の踊り場で彼を見つけてしまったんです。
他のクラスの女の子と抱き合っている、彼の姿を。