1/100でも、じゅうぶん甘いね。



顔はよく見えなかったけれど、あのふわりとした茶色の髪は、細いけど筋肉のある背中は。

程よく着崩した制服は、右耳のピアスは、間違いなく私の彼氏で。



女の子は、誰だかわからなかったけど。


でも、くるくるの巻き髪の、大人っぽい人だった。気がする。

2人は階段の踊り場で抱き合っていて、窓から差し込む光に照らされてドラマのワンシーンみたいだった。




……何でだろう、何で抱き合ってたんだろう。

ううん、理由なんで知りたくないけど。



声をかけることなんてもちろんできなくて。
私が見ていることに気づかない唯くんに、腹が立って。


そっとその場から離れて、教室に戻って、1人で家までの道を歩いている。



ひとりで帰る帰り道が、なんだか寂しいのは。


秋の冷たい風のせいだ、きっと。




いつもいるはずの唯くんがいないからじゃ、ないよ。




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