1/100でも、じゅうぶん甘いね。
「唯くん、」
その背中を呼んだら、唯くんは振り返らないまま応える。
「何だよ」
「待っててくれて、ありがとう」
そう言えば、唯くんの頬が少し赤くなったような気がした。
返事をする代わりに、ぎゅっと力を込められた手に、頬が緩む。
学校から家までの帰り道、なんの特徴もない住宅街をふたりで歩く。
唯くんは前は自転車で通学していたんだけれど、私が徒歩だからって自転車通学をやめて、一緒にゆっくり歩いてくれるようになった。
部活帰りの運動部がアイスを食べているコンビニを通り過ぎて、小学生たちが「また明日ねー」と手を振り合っている公園を横目に見て。
春の優しい風が、どこからか運ばれてくる、晩ご飯のカレーの匂いが。
なんだか全部幸せで、大きく息を吸った。
「…お前、補習になるって、テスト何点だったわけ?」
…なんで、そういう方向に話題を変えるかな。
せっかく幸せに浸っていたのに。
「……12てん…」
小さな声でつぶやいた瞬間、信じられない、って顔する唯くん。
「ほんとバカ」
意地悪に笑ったって、それも好きだよ、ばか。