1/100でも、じゅうぶん甘いね。
結局、意地悪なくせに優しい彼は、私を家まで送ってくれて。
バイバイって手を振ったら、右手をひらりと振って笑ってくれて。
そして家に帰ってから、離れてしまった手の温もりに寂しくなった。
さっき唯くんがしてくれたみたいに、自分の左手を右手で包んでみたけれど。
寂しさがすこし増えただけだったから、やらなければよかった。
「……そうだ、写真送ろう!」
さっき撮った夕焼けの写真、唯くんに見せようと思っていたのに、待っててくれた驚きで見せるのを忘れていた。メッセージで送ってあげよう。
ふと思い出して、突っ伏していたベッドから飛び起きる。
鞄の中に入れっぱなしだったスマホで、メッセージアプリを起動したら、そこには既に届いていたメッセージ。
「……あれ?」
『倉科唯:画像を送信しました』
唯くんからのそれを開けば、見覚えのある、ピンクみたいなオレンジみたいな綺麗な空の写真で。